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平成25年12月28日に発生した脱線事故の原因調査と再発防止策についての報告

弊社独自の調査による事故原因の推定及び再発防止対策について

 

【脱線の経緯】

平成25年12月28日午後1時41分ごろ、大原発上総中野行普通列車第63D列車(いすみ300形、現車1両、運転士1名、乗客4名)は西畑駅を定時に発車し、1時42分ごろ時速約35キロメートルで現場(大原起点25キロ800メートル付近)にさしかかった付近で、運転士は車体に異常な振動を感じたため列車を停止させ確認したところ、先頭台車の前輪が1軸脱線していることが判明した。乗客4名および運転に怪我等は無かった。

運転士は直ちに列車備え付けの無線電話で大多喜駅指令員に連絡し、大多喜駅から職員が現場に急行し乗客を車両から避難させた。

この事故のため、いすみ鉄道線は大多喜駅―上総中野駅間で列車の運転ができなくなった。

 

【認定される事実】

1:線路状態について

・現場線路は西畑駅から千分の25の下り勾配、R200の左カーブから、R250の右カーブにさしかかった付近で、勾配も千分の11の上り勾配に変化している個所である。

・現場の線路の整備は2010年の会社存続決定後に点検を実施し、2011年のキハ52運転開始前に不良枕木等の一部交換整備が終了している。

・現場の線路の保守点検は外部の軌道検測専門業者に依頼し、直近では2013年1月に5mごとに線路の軌間を計測する静的検査(※)を行っている。その検査結果によると、現場の手前約20mの所1か所で基準を1mm(ミリメートル)オーバーする数値が計測されているが、それ以外の所ではすべて基準値を下回っている。

・レール、枕木等には事故を引き起こすようなひび割れ等の損傷は見られない。

・現場付近の線路にはカーブの外側に左車輪の脱線痕があり、脱線痕が発生する手前の線路に車輪が乗り上げたとみられる痕がある。

・右車輪の脱線痕は左車輪とほぼ同じ位置から線路の内側に生じている。

・車輪が乗り上げたとみられる痕がある手前10mほどの所で、それとは反対側、進行方向右側に当たる線路の内側に何かがぶつかったような跡が見られる。

・左側車輪の脱線痕は線路の外側に、右側車輪の脱線痕は線路の内側にある。

 

※静的検査とは、検査係員が徒歩で巡回して検査測定を行うこと。これに対し、検測車両を走行させて行うものを動的検査という。

 

2:運転について

・当該運転士(65)はJR出身で、国鉄木原線時代から同区間に乗務経験のあるベテランであり、健康状態にも問題はなかった。

・現場は制限速度45キロのところ、時速35キロで走行していた。

・乗客は4名のみであり、その他の搭載物等はなかった。

・運転士は西畑駅出発後下り勾配を惰性で運転してきたが、現場の手前で上り勾配にさしかかったため、力行ノッチを3段に入れ、加速を試みていた。

・列車に遅れ等は無く、運転状態は正常であった。

 

3:車両について

・事故車はいすみ300形302号車であり、平成24年1月にいすみ鉄道に導入された新型車両である。

・事故車は上総中野方の台車が動力台車であり、大原方は付随台車である。

・動力台車は車輪4輪が動輪である。(キハ52は機関側1軸2輪のみが動輪である。)

・事故車には大原方にトイレの設備がある。

・事故車両には運転記録装置が搭載されており、正常に動作していた。

・事故車両は営業運転への導入から1年10カ月ほどしか経過しておらず、事故歴、故障歴等の特筆するものはない。

・当日も機関、車両共に正常に動作していた。

 

4:脱線の状況について

・脱線は進行方向左側(カーブの外側)へ向けて先頭台車の前輪1軸が脱線していた。

・脱線車輪は左側が軌間の外側へ、右側が軌間の内側へ脱輪していた。

・脱線現場の線路および線路付近には置石、倒木、土砂崩れなど、脱線を引き起こすような異常は見られない。

・脱線した車両および台車、車輪には脱線の原因となる何かに当たったような痕跡は見られない。

・台車及び車輪、車軸に脱線の原因となるような破損、欠損は見られない。

・車輪には脱線によって生じたと思われる表面の傷以外の異常は見られない。

・機関、動力伝達装置に脱線の原因となるような破損は見られない。

・動力伝達装置等車両部品の脱落、紛失は見られない。

・車両本体への損傷は見られない。

・線路に軌間拡大などの現象は見られない。

 

【推定される事故原因】

1:現場の線路状態は事故現場の手前1か所で基準値を1mm超える軌間の拡大がみられるものの、それが原因で脱線を引き起こすような不良な状態ではなく、検査記録も別会社に検査を依頼しているため自社内でのデータ改ざんなどは考えにくい。また、車輪が線路の外側へ脱線している状態から、枕木の腐食等による整備不良、軌間拡大が脱線の原因とは考えにくい。(枕木の腐食等による線路の拡大が原因の場合、両輪共に線路の内側に脱線する。)

2:運転士の証言および車両に搭載された運転記録装置の解析により、列車は制限速度を10キロ下回る時速35キロで走行していた。このため、速度超過によるカーブ外側への飛び出しは考えられない。

3:特筆すべき状況は以下のとおりである

・脱線痕が始まる10メートルほど手前で、脱線したのとは反対側、カーブ内側の線路の内側に何かがぶつかったような痕がある。

・列車が線路を乗り上げている個所は、列車は力行3ノッチで加速を開始した直後である。

・先頭車輪が動輪であること。

・乗客4名と、ほぼ空車状態であった。

・運転士は当初揺れを感じ、その後振動を感じ制動操作を行っていること。

・当該車両には空気ばね台車が装備されていること。

・整備上車両の輪重バランスには問題が見られないこと。

以上の状況を総合的に鑑み、この脱線の原因は低速でSカーブ(連続する左右のカーブ)を走行する際に発生したこの台車から生ずる特有の車体の横揺れが、何らかの作用で増幅され、車輪にかかる圧力がバランスを崩した状態のところで、上り勾配の力行に入ったことから、動輪である先頭車輪がカーブ外側へ線路を乗り越えて脱線するという複合的な要因により発生したと考えられる。

 

再発防止策について

正式な事故原因の調査結果が発表されるまでには数か月を要すると思われますが、弊社としましては、運転再開にあたり、以上の推測される原因を考慮し、次のように再発防止策を実施いたします。

1:事故現場のカーブ付近で全列車時速15キロの徐行運転を行います。

2:事故現場付近に脱線防止レールを今年度中に敷設します。

3:いすみ鉄道線全線のカーブ及び本線上分岐器の緊急点検を1月中に実施します。

4:半径250メートル以下の曲線部分および緩和曲線部分に脱線防止レールを次年度以降敷設します。


なお、脱線防止レールの設置にはある程度の時間を要することから、事故現場につきましてはそれまでの間、時速15キロでの徐行運転を継続いたします。

なお、事故原因につきましては現時点では推定の域を出ませんが、運輸安全委員会の報告書が通常数カ月から数年かかることを考慮しますと、輸送の安全が第一使命の鉄道事業者として、運転再開にあたり事故の再発防止という観点から、今後疑わしい部分が見つかった場合には対応してまいります。

 

【別添】 事故現場及び事故車両の写真(PDF)

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